ふるえて、空 見上げて/たりぽん(大理 奔)
 
ゆくえをさえぎる雲は
散っていきました
春です

昨日までの私はふるえていました

波に洗われる消波ブロックのように
、ふるえていました

風に吹かれる朽ちて傾いた電柱のように
、ふるえていました

ふとん、と書かれたトタンの看板のように
、ふるえていました

踏み割られた瓦のように
、ふるえていました

月を見ない獣のように
ふるえて

ゆくえをさえぎる雲は
散っていきました
春です

昨日までの私はふるえていました

なにかをたくらむ桜のように
鈍色の空を見上げて

ふるえて





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