春コート/かのこ
 
厚化粧は可愛くないと
男は言った
煙に巻かれたように
ぼんやりと思い出す

白いスプリングコートが
包むのは私一人
妙な孤独感を抱えて
幾分か優しくなった風を吸い込む

単に眠たいだけなのか
それとも目の前にいる私が可笑しかったのか
目を細めながら煙草の煙を吐く仕草で
あらゆる理由を欲するようになる

そして、誰かを恋しいと思う分
一人でいるのが好きになっていって
言葉なんかじゃなくって
音で繋がっていようと決めたから

いろんなもの捨ててまで
可愛い女になっても
つまらないじゃない
そう思うから
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