聞こえなくなる世界/海月
 
ある日それは突然襲う

イヤホンをつけて音楽を聴こうとしたら
片方だけ音が聞こえずらい
イヤホンをもう片方に当てたら気づいたんだ
片方が聴こえなくなってることに

病院に行く途中
不安が不安を呼ぶ
積み木を組むように重なる

診断結果は予想通り
複雑な名前を聞かされた

「治りますか?」
「残念ながら・・・」

さらに続けて言う
医者は裁判官に見えた

「両方とも聴こえなくなる
 危険性があります」

カルテに響く鉛筆の音が
積み木を全て崩した
頭の中と心の中両方とも

認めたくない
みとめたくない
ミトメタクナイ

誰かの声も
君の声も
僕の声も
自然の音も
動物の音も
機械の音も

全てが愛しい
全てが懐かしい
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