シルエット/LEO
 
図書館は人もまばらでコツコツと靴音の方が気になる程の静けさだった。
特に目当ての本を探しに来たわけではなかったが気が付けば一時間もそこにいた。

腰のあたりの高さの棚に顔を近づけしゃがみ込んだまま本をめくって‥
天井に近い本棚の照明はほのかに暗く二冊目の本に手を伸ばしたその時。
向こう側、窓際の人影が熱心に本を読んでいる、のが隙間から窺えた。
その熱心な眼差しがどことなくあの人に似ている、髪形も顔の輪郭も違うのに。
私が何冊かの本を手に取る間、その人は姿勢を崩すことはなく、肩が少し揺れたろうか。
しびれた足に力を入れて立ち上がった時もそれに変わりはなく‥

視線を送っていたことなど気づきもしなかっただろう。
気づいて欲しかったわけじゃない、どことなくあの人に似ていたから‥

靴音を滑らせてその場から離れる。
窓の外に灰色の冬空が暮れようとするのがちらと見えた。
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