ノート(緑と雨)/木立 悟
己に酔って
緑に心を晒した男が
緑に穿たれ 散ってゆく
雨に打たれ
あとかたもなく
虚ろな道に 消えてゆく
おまえのなかに獣はいない
おまえのなかにいるものたちが
それをいちばん良く知っている
おまえがおまえに向けられた
微笑みなのだと感じたものは
おまえ自身の泣き顔にすぎない
おまえはおまえを救いたいだけ
そのために言葉を殺していくだけ
殺した言葉をならべていくだけ
緑と雨を おまえは知らない
穿たれ 打たれ 歩みつづける
けだものたちを おまえは知らない
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