ひよっこバーテンの日常から /あまくちペルノ
■11席のいちばん端に座った私のお客さん
カウンター
座ったその人は "サザンカンフォートを”といった
”いつもどおり、クランベリージュース割り?”
”いや、ロックで”
私は氷を削ってゆく。できるだけ、丸に近づけて。
氷は丸く削るほどにとけにくくなってゆく。
私は氷を削ってゆく、ジャニスジョプリンのかかる店の中
不器用な音をひびかせながら。
ただひたすらに、丸くなった氷が入ったグラスに
誰かの思い出を注いでいたんだね
私の氷には角が無いから、
心がまあるくなるよ。
どうかゆっくりしていって
外は少し雨降り
こんな夜の中にはジャニスが似合うから。
戻る 編 削 Point(1)