藁の基地/蒼木りん
いまは
稲刈りが済んでも
束ねられない藁束が
三十年ほど前には田んぼの隅に
何十と積まれていて
秋には
それが子どもの遊び
それで基地を作った
床を敷いて
階段を作って
壁を囲んで
屋根もつけた
子ども四、五人入れる
塵っぽい基地
藁くさい
ちくちくする
洗濯しても落ちない
藁くずだらけの服になって
藁崩して
叱られた
いまは
十字架のような棒を立てて
棒だてもしない
家族総出もない
こじはんもない
稲刈りが終わると
田んぼは寂しいな
※ こじはん = 農作業の合間に挟む休憩時間。お茶を飲んでお菓子や
おにぎりなどを食べる。
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