書けない時には/石川和広
 
詩を書くこと
ばかり考えてる

谷川俊太郎のかげが
うしろにある
最近読んでいるのだ

こっそりと宇宙と
話した少年
または死について考える老人
詩人は少年と老人が同居する
と云ったのは誰だっけ

彼のデビューを飾ってくれた
お父さんが亡くなったとき
彼ははだかになって
詩を書いた
寒々しい雨の音が
詩集から
聞こえてきた

どんな気持だったんだろう
聞かずともさみしい少年の
無言の呟きが聞こえる

「世間知ラズ」は初めて買った詩集だった

僕のお父さんは
今僕の初めての詩集を
売りに走っている

僕のお父さんが
今死んだら
僕は生
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