ノート(25Y・11.10)/木立 悟
人さし指と中指で
腕についた血を軽くはさむ
もう流れないそのかたち
なかば閉じかけた三本の指のあいだから
口と目のない白い髪の女のにおい
肩に重さの無い顎を乗せる誰かがいる
ブリューゲルから二本足で立つものをすべて消した時
鉱物で描かれたゴッホがあらわれる
上からの光 下からの光 またたく鉄塔
かしずく石の鳥の背が道を産む
赤銅 白 灰 湯を冷ましてできた水
野の傷は治らず ただ見えなくなる
ふたつに割れた草の方舟
どこまでも道の片方に並ぶ
ふたつに割れた光の亡骸
雪にまみれ道の片方に並ぶ
どこまでも道の片方に並ぶ
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