さようなら、僕が住んだ町へ/恋月 ぴの
僕がこの道を選んだのも
君に諭されたから。
でも君を責めてはいないよ
いずれ僕は選ばざるを得なかった
モラトリアムって言葉が好きで
明日って言葉が大好きで
携帯の呼び出し音がなっても
伝言が一杯になっても知らん顔。
そんな日々ともお別れしよう。
台風の過ぎ去った今日の日は良く晴れている
20年間過ごした町に転出届けを出してくるよ。
もしも結果がすべてと言うなら
僕は完全に負け組。
君以外の全てを失って
20年もの日々の流れは
虚しく真夏の青空に吸い込まれていった。
僕を乗せたJR京浜東北線は川向こうの
あの町に向かって進んでいく。
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