肖像(一)/前方後円墳
 
中吊り広告といっしょに
垂れ下がっているおじさんの
大きなあくび
ふと 幸せそう
なんて

風景が揺れて
どこからともなく
空き缶がからころと
わたしの足許に転がってきましたが
どうでもよくなって

知らないうちにわたしの音も
どこかで転がっているのか
見知らぬ人に拾われたのか

今でもわたしを置きっぱなしで
電車は走っているのですが
居睡りをしているおじさんと同じように
折れ曲がった頚骨の軋みでいっぱいになってしまって
不自由な夕焼けが
じろじろと


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