ノート(35Y、5.9)/木立 悟
 



    半分くずれた家のなかで
    少女は少年を待っていた
    ほこりっぽい昼の陽が
    砂を焼くにおい
    うっすらと差し込む光の帯を避け
    髪を短く切り
    汚れた服を着て
    倒れた階段の近くに立ち
    少女は少年を待っていた
    彼のくちびる あご のど 首
    彼の口から下を見つめながら
    じっと見つめながら
    彼が「なぜ?」と言うのを待っていた
    ただ待っていた





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