マルボロ/Monk
 

コートはずぶぬれだった
バス停には私と化粧のくずれた女がいる
女はずぶぬれのマルボロを手にするが
火がつかずに舌打ちを繰り返している
女には似合わない煙草だ
「あたしに似合うものなんか一つもないわ」
火はいっこうにつく気配がない
私はポケットの中で尖った感情を握りしめる
雨足はいっそう強くなり
女の頬には溶け出した赤いマスカラが筋を作っていった


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