私事/人形使い
 
わたしはひとを大切にするために
詩の中にわたしではない誰かを登場させることは致しません。

"わたしではない誰か"という存在を
空想の中で自由に操ることは
他者存在への非許容だと思えてしまうのです。

わたしはひとを大切にするために
詩の中に強い思想を込めることは致しません。

ひとつの思想を採択し、投げかけるということは
その思想を受け入れることのできない誰かを拒絶することであり
そういう可能性が潜在している文章を
美しいと思うことができないのです。

だからわたしは
この世界の圧倒的な美しさとひとり対峙して
静かに言葉を連ねていたいのです。
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