月見る子/
蒼木りん
地平から生まれ出た月が
あまりに大きくて
よごれた橙色だったので
子が泣いてしまった
その子は
大きくなると
空の真上に出ている月が
あまりに遠くて
なにか哀しい気がしてならなかった
幾年月が過ぎて
浅い眠りにけりをつけた老人は
明けていく空の西に
黙ってなじんでゆく白い月が
いちばん好きだと想った
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