女の子に生まれたかったと思う/渡邉建志
 
女の子に生まれたかったと思う。女の子の体の匂いのする、女の子に生まれたかったと思う。女の子の友達や、妹と、床でごろごろしたり、したかったと思う。だけど僕は男に生まれて、心のほうも身体のほうも男のようなので、性転換をしてまでそうしようとは思わないのだけれど。自分が女の子の匂いがするのっていい気分だろうと思う。それから女の子同士でごろごろするのって本当にいい気分だろうと思う。いまたとえ僕が男の子として他の女の子とごろごろできたとしても、それほどまでにはいい気分じゃないだろうと思う。それはまたべつの気分だ。もし僕が女の子だったらあんまり女の子として女の子とごろごろするのが好きになるだろうからそれにずぶずぶとはまって自立できなかったかもしれない。だから、男に生まれて、もし女の子に生まれたら女の子とごろごろしたかったなあ、なんて夢想しているぐらいが、ちょうどいいのかもしれない。
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