癖/湾鶴
 


ぼうず頭を撫でる
指を刺す硬い毛と
頭皮から感じる桃源の温度
父と母がここにいる

朝刊を読む父の無精髭

下顎のかげんが、ちょうどよい。
皆おなじ背丈、おなじ艶、おなじ顔。
皮膚に押し込めてもツンと立ち
逆らうと容赦無く指を刺すのだ。


母の白影が、おむすびをにぎる。


スリッパの音が不規則に並んで
おなじ床、おなじ香り、おなじ湯気。
炬燵の台はひんやりと心地よくて
耳を当てると包丁のタップが響く。



ペーストするように
親の住んでいる
ぼうず頭を撫でる


戻る   Point(2)