柔らかい夜に/
石川和広
さまよってたのではなかった
新しいダウンに袖を通したとき、包まれた、温もりに
軽くて安くて
チャチで大切な
千円の
この瞬間
わたしの迂回や迷妄は
大切なひとの
消えていく影に
捧げられていたこと
きづいた
わたしの中に
ふうじられた骨折
嵐の中笑っていた
静かなとき
しかし
それも
ふりかえっても
過ぎ越した
必然
神風なんて
ふかない
たくさんの苦の
人々の涙の中に
捧げられていた
からだと
ホンの少しの我欲
柔らかい夜よ
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