はじらい/
石川和広
狂ってしまうと、あなたを
愛する草、風、鉄橋が散らばる中で
わたしは何もない
なにもない
なにもない
ためらいも勇気も
恥も
釣りをしている人がいて。
何もないことをくぐる
冷たいへびの抜け殻がひやりと暗くさわる
あなたを
こもる口笛で
あなたを
遠く馳せて
はげしく欲情して
わたしの頬がこわばる
河に水柱が天に向かい
わたしは、あなたを助けたいと
そして冷たいあなたの肌に触れたいと
雨粒、あいまい流れる堤防へ走って人へ
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