友だち/蒼木りん
地上を霧が覆ったまま
深夜
曲がりくねった道は濡れていて
窓から
ぼやけた灯り落とす街頭を見ていた
「独りはいいものだね」と
後から言葉にしてみた感覚
コーヒーを飲み終えて
苦い甘い
一つ駅となり街のあの人に
「おやすみ」のキスをする
そしてわたしは
明日も朝の月を見られない
友だちという
自分でない
家族でない
他人に
尽くす行為をしてみたい気もする
無償の愛を
不意に貰ってみたい気もする
遠慮さえなければ叶うかな
夕方
ようやく晴れて
夕日が柿色に熟れて沈むのを見たよ
ポチャッと割れそう
もうすぐ
見知らぬ街へ嘘をついて出
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