私の時計/蒼木りん
オレンジ色のライトの下から
蒸気が昇ってゆらめいていた
ふとそれは
建物から炎が上がっているのかと錯覚した
知っても
綺麗だと見ていた仕事帰り
君との逢引の日は
昼の中の夜にまぎれ込んだ
最後の日は
いつだったか忘れてしまった
もうそろそろ禁断症状
連絡頂戴
月が出ていてよかった
疲れたよ
おざなりな慰は飽きたし
少しお芝居がしたい
ビーズ屋の前に立ち止まったのは
ビーズ編みをしたいと思うからじゃなくて
子供の頃宝物だったものが
瓶の中に入ってたくさん並んでいたから
とりわけ
硫酸銅の結晶のような青い
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