押入れの底/蒼木りん
かつては
押入れの底のほうにあった秘密のトビラは
探せば無くて
気まぐれに夢に現われて暗かった
目覚めて探すと
やっぱり無くなっている
その先に何があったか忘れたけれど
押入れにトビラがあることが特別で
わくわくした
そうだな..
今は無理だけど
年寄りになったら
押入れの底にトビラをつけよう
そのトビラの先に
半分土に埋まった部屋を作る
船につける丸い窓
浸水しても楽しそうだ
地震が来たら
歪むかな
電気も冷蔵庫もエアコンもない
昼は
灯台の天辺に行き
夜は
半地下で寝る
押入れの底っていうのは
疚しいからだろうか
わからない
それでも
誰にも知らせない
押入れの底のトビラ
戻る 編 削 Point(0)