一画/蒼木りん
荒んでしまうから
自分の一画だけはきれいにしておく
飾らない
飾りはきれいにするときに邪魔だから
テレビなんか見ない
見たいけれど
それどころじゃない
固まりかけたこころが
掻き回されるのもなにか
抵抗感
解放されて
何とも無しの一時
ふと忍び込む言い知れないそれは
白紙のぺージに挟まれていた
虚無の絵の描かれたカード
本当の自身
あるいは
いくつかの自分のひとつが
そんなものの中で
羽蟻のように溺れている
それを眺めている
沈みはしない
ただ
普通に空気が吸えないから
苦しくて
水に浸っているから
恐怖でもがく
それを眺めている
天からの「蜘蛛の糸」のように
掬う棒を差し出すことは
もう少し後にしよう
それさえ
ゼリー状になった脳を
液状にもどす作業のようだから
とりあえず
今日も
自分の一画だけはきれいにしておく
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