ノート(瞳・音・もの)/木立 悟
 


階段を下りてくる人たちの
足から上が見えない瞳
春に消えた白猫の
老いた背中を野に見る瞳



からになった犬小屋で
じっと何かを待っている音
とめどない霧と霧雨のなか
とめどなく独り歩きゆく音



雲と水をすぎてゆくもの
雨の手綱を緩めないもの
立ち去る歩みばかりを赦し
近づく歩みを赦さないもの





[グループ]
戻る   Point(2)