虫の声/蒼木りん
 
とても不思議なのだけれど

秋の蟋蟀や鈴虫のように 
羽で鳴く虫の
あの艶やかな音は
なぜにあんなに高く響くのだろう

あんなに小さな
触れれば儚げな羽なのに
擦り合わせて出す音の仕組みは
人工には作れないだろう

虫どうし
求愛だけの手段ならば
あの音域でなくてもよいのではないか
あれでなければならない理由はなんだろう

虫は
耳が遠いのか
耳が聞こえないのか
あの音は電波のようなものなのか

でも
なぜ
それが人のこころに響くのか
波長が合うときがある

すすき 十五夜 金木犀
彼岸はまだかいな

蟋蟀
つゆつゆつゆ と鳴いていた

今日はそんな夜だった

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