おかまのジュンちゃんの事/do_pi_can
 
「かぁちゃん、ほら、池に星が映ってるよ。ほら、ね、きれいだよ。」

そう言う僕を無視して、母は、真っ暗な夜道を足早に歩いていきました。

「ねえ、かぁちゃん。」

何度も追いすがって言う僕に、人生のいらつきの全てをぶつけたくなったのか、

「バカだね、この子は。」

肉厚の手が、僕を何度か引っ叩きました。

「よく見な、あれは全部、家の灯りだよ。」

確かに、僕達のいる高台から谷の下、そして、対面の高台まで、

家がひしめいていて、その灯りが、

池に映る星のように見えたのです。

高台の上に行くほど、お金持ちの家、谷の底は、貧乏人の安アパート群で、


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