ノート(夜の速さ)/木立 悟
夜は速い
夜は速い
これから向かう世界のすべてが
わずかに低く傾いているかのように
夜は速い
夜は速い
背に積み重なる力のように
夜は速い
夜は速い
誰かに遠去けられているかのように
速さは増す
速さは増す
背より高い草の原に立ち止まり
もう一度進みはじめても
夜は速い
夜は速い
わたしだけを切り取ってゆく
影を固めたような風
夜は速い
夜は速い
誰もいない道に張られた
蜘蛛の糸のゴールを過ぎても
夜は速い
夜は速い
どこへ着くのか教えてもくれずに
夜は速い
夜は速い
とどまることなく
ただ独りの傾きを飛ぶ
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