ある夜の歩み/木立 悟
いつもいつも同じ場所で
同じ音とすれちがう
同じ夜の
同じ時間に
小さく横に弾む音が
沈む星を捕らえては
右と左をくりかえす
光の歩幅をくりかえす
ひろく感じた空もつかの間
羽の枠内に収まってしまう
窓の隙間が雨の姿を
他よりひと回り大きくしている
誰かの歩きつづける輪郭が
わずかにわずかに混じって届く
ある夜いつもの同じ場所に
白い花が落ちていて
通りすぎてください と言った
だがわたしは立ち止まり
葉も茎もないひとりの花を
家まで連れ帰ってしまった
小さな音を
連れ帰ってしまった
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