幽立ち/六崎杏介
今日は朝から
鼻から吸うヤツをやりっぱなしで
恋人は遠くの街で仕事をしていて
職業安定所で見つけた
結婚式のカメラマンの仕事
面接にそなえて髪を
雨に打たれて回ったけれど
どこも休業で
帰ると、やっぱり部屋は
暗くて、コーヒーが無くて
お香と安定剤、そして鼻から
寂しくて、寂しくて、泣きました
雨のガラス臭に気付きました
とたんに綺麗な無色透明に
心が鳴りました、無音で
そうだ、描きかけの絵を思い出しました
キャンバスを置いて
服を脱ぎます
ゆっくり剃刀に手を
刃物はもっちゃいけないといわれていたのをおもいだして服をきました
もうじき恋人が電話をくれます、雨がおしえてくれました。
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