ノート(片目)/
木立 悟
荒れ野が片方の目に鳴り響き
もう片方の目に指揮を促している
痛みの無い緑の涙を流す
ひとりの観客のために奏でられる波
波を聴き終えたひとりのものが
誰に向かってかさえわからずに
片方の目を差し出している
そしてあたりまえのように
目を受け取るものはいない
片方の目から何もいなくなっても
もう片方の目は鳴りつづけている
夜が緑に染まっては去り
波が涙が干いていっても
もう片方の目の奥で
荒れ野は今も鳴り響いている
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