麻酔/蒼木りん
 
切り離された臓器の傍らであなたが眠っている

ちからなく

まだこちらに戻ってこない意識


真っ直ぐに伸びる廊下の向こう
夕日が熟れた色で光っていて
あの世へ行く道みたいだった

待合の長椅子にもたれ
病院というところにうごめく見えないもの
見えるもののさまざまが廊下を往来する

インスタントコーヒーと汚物の匂い
私は大人になって知った
消毒液の匂いはストイックな清い匂いではなかった

ウエストの締まった白衣と白ストッキングの中身は
人形のように脱毛されて指先はいつも冷たい
それは嗜み

なま臭い生の匂い金属の器具と消毒アルコール
薄暗い蛍光灯のト
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