光の鳥/渡邉建志
電車は走る、光を拾う鳥のように
森を抜け、窓に緑が流れ
あたりにはぼくの未来や時間が
とてもまぶしく渦巻いていて
その中へその中を
考えることを忘れたまま
勝利や敗北やすべての闘いを忘れたまま
みなは眠りに落ちる
鐘が鳴って夕日と湖の駅に
電車が停泊するけれど
誰も降りないし、誰も乗ってこなかった
みなの夢の中で巨人が闘っている
ひとり起きているぼくは
夕日と湖の向こうに
両手を振り上げて突進する
彼の姿を見たような気がしたのだけれど
気のせいだったのかもしれない
気のせいだったのかもしれない
みなが目覚めたのは
夕日と鐘の音の中で巨人が死んで
ずっとあとのことだ
ぼくがまだ生きて電車に乗っているので
すくなくともあの巨人はぼくではないらしい
いや、あの巨人はぼくではない
夢から覚めてすべてを忘れたまま
みなは最終駅を降りる
ひとり残された電車の中に
まだぼくの未来や時間が
とてもあいまいに渦巻いてい
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