ノート(白連符) /木立 悟
呑もうとしても呑めない
コップのなかの氷
それは
自分の指の影だった
音が止まってしまったのに
映画はまだつづいていて
あたりを見わたすと
席には誰もいなかった
席には
蝶しかいなかった
さまざまなものを越えてきた
ただひとつの羽
あなたはほんとうに
わたしの手のひらに
降りたかったのだろうか
自分の手が
足になっていくのがわかる
こんなもの
こんなもの
手のひらと呼べるものか
あなたはあなたですか
と訊かれ
たぷん と答えた
たぶん では
重すぎる気がして
(41Y.5・24、6・18,19,29,30)
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