裏川/渡邉建志
 
 
なやみにみちてねむりに落ちる
まどろみながら足は窓へ向かう
外を見下ろすと今まで知らなかった河が流れていて
月の光子を静かに回す
いろいろなものが流れていく
光が流れていく音楽が流れていく
僕の悲しみが、過去が未来が流れていく!

私は黙ってその流れを見つめている
ただ私は今だけで悲しい
私はこの新しい街へ出ることは出来ない
ただ私はこの窓から見える河の一部分だけを
覚えているだろう

明日になれば
そこはまた、裏庭になる



君が川の中を歩いていく

白い窓から射す光が君の目に溶けて消えていく
青い空を透かして見た緑の樹は今はもうないんだよ

沈んでいく、沈んでいく



幼い時流れていた川は
君の家の前
笹舟は未来へと
競争していったよね

君は成人になって
いま君の目に映る川は
悲しみを乗せて水車を回し
ゆっくり過去へと流れていくね

 
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