君じゃ駄目だと彼は言わない/
みへき渉
彼は、何も言わずにあたしを抱きしめた。
そうして、深く息を吐くと
うんと小さな声で、あたしの名前を呼んだ。
あたしは彼の頭をそっと撫ぜて
愛してるよ、と告げた。
あたしには、彼が望むことはなんだってわかる。
だって、あたし達は似たもの同士だから。
だからわかる。
彼が、あたしを傷つけられないことも
あたし達が寄り添っても、決して幸せになれないことも。
戻る
編
削
Point
(2)