岩の下/山内緋呂子
小女子(こなご)が 土肥へ行こうと言う
わたくし 線路上で手と足がちぎれて
向こうへ行きますけど
あなたは その先を電車で走ってくれますか
めざせ城ケ崎
旅の味は
裏側にあり
つり橋をわたりたいので
岩場へ行くと
高い岩低い岩
ところどころに海がくぼんで
低い岩場でずっと
石から顔を出して写真を撮った
水平線というものは
大人になって初めて見る
丸いような気がする
上を見ると
高い岩に若者が数人歩き
服を着ているのが とてもおかしかった
若者たちは
低い岩場で行ったり来たり
写真を撮る我々がおかしかったようだ
突端は
しぶきがかかるのが楽しくて
ずっと座っていた
イワシの干したのと 玉すだれ二枚がけ民宿へ
ふすまの絵はやっぱり魚だ とか
お茶っ葉は番茶だ とお話して
小女子が
僕は卓の下で寝る
あなたはふすまの裏で と言う
それならば
一畳に乗るので
岩の下
くぼんだ海へ出してくれませんか
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