繋がってなんかいない、繋がってなんか/小松 Anne
その男とはセックスしかしていなくて、
それはつまり
良い本ではあったけど返し読もうとは思わない(思えない)もの
と、近いような感覚で
彼と連れ立ちどこかへ行こうと思えない(映画館?ましてやウィンドーショッピングなんて!)
だから
その男とはセックスしかしたことがない。
移動がない恋はある意味シンプルで好ましい。
ああ、そうそう。
セックスの他には共に仕事もしているわけだが
仕事をさせればなかなかにいい男である。
そして、男は
その時と何ら変わらぬ風情で、声で
私の部屋で、私の布団で、
私に脱げなどと言い
私はただただ
甘い声で啼くばかり。
この部屋はお前の匂いがする、と言われ
あからさまに欲情してしまう自分を
情けないとは思わない。
寂しいなどとは思っていないのだ。
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