轍/石原大介
 


区民センター脇の長い長い信号待ち
フットペダルの反発を確かめながら彼
今年も交通渋滞は伸び盛り、だなんて
ふくよかな思案にくれている

最後部でぐったり
お昼の食べ過ぎで夢うつつなわたしの
強張ったひろがりに染みわたる
エンジンの細動
なにやら得意気に
アメンボのように



軌道はプロセスについての知識の表象にすぎない。プロセスについて分かっ
たことが増えるたびにぼくらは戻ってそれを修正する。ダイアグラムはぼく
らの知識と共に成長していくだろう……



 」

彼がアクセルを踏み込む
ゆっくり
板張りの廊下へ
街の角度がなだれ込む


こんにちは。


おげんきそうで、なによりですわ。


毎日々々
路線バスで
定まった時刻に定まった場所をめぐり
めざましい人たちの顔から顔へ
しりとりのように授けられ
刻まれ続ける
あたらしい季節
あたらしい轍



くすりだけもらいに、ちょっと、ね。


あなたは、きょう、どちらまで?





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