路上の手袋 /服部 剛
昨日の仕事帰り、バスに乗る時に慌ててポケ
ットから財布を出した僕は、片方の手袋を落
としてしまったらしい。僕を乗せて発車した
バスを、冷えた歩道に取り残された片方の手
袋は、寂しいこころを声にも出せず、後部座
席に座る僕の後ろ姿を見送っていたのだろう。
駅前の駐輪場で、手袋をしようとポケットに
手を入れた時、片方が無いことに気づいた僕
は、今頃無人の夜のバス停で独りきりになっ
た姿を想い浮かべると、それが僕自身の姿の
ように、あるいはしばらく忘れていた誰かの
姿であるように、とても寂しい気持になった。
自転車に乗り、いつものわが家へと自転車の
ペダルを漕ぐ。ハ
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