冬の日/小鳥遊
 


 空が遠のくことを知る



 
 はしった
 私ははしった
 白いいきがさえずるように
 虫の音がのぼりつめるような感覚で
 校舎のすみずみを駆け上がってゆく
 ふくらはぎのうでの凛とした連動
 私の身体が燃えるようにあつくなりだす
 耳だけがつめたい





 リノリウムの床がなるのは
 かなしみではない
 斜陽のせいだ





 白いスカートのひるがえり
 廊下を階段を
 その光の帯を踏みしめるように
 わたしのまぶたは金色にたなびく
 強がるな と
 私の耳の奥が反転する
 ただ
 ただ
 私は走った 
 は
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