凍れる詩人 又は、冫(にすい)の詩/三州生桑
 
今朝はとても寒かった
来週は立春だといふのに、何といふ寒さだらう
あまりに寒かったので、私の舌は凍りついてしまった
物言へぬ詩人に存在価値など無い

―――死んぢまへ!―――

実に冷たい朝だった

   §

美しい氷の女王に会ひました
彼女は微笑みながら、冬薔薇に液体窒素をそそいでゐました
私は彼女に近付き、仄青(ほのあを)いオーロラに包(くる)まれ、その視線に捉へられ・・・
 (氷の女王の視線は、摂氏マイナス273・16度)

女王は、つららの指で私の心臓をもてあそび、冷ややかな死へと誘(いざな)ひます
死・・・
否、死よりも凄惨な、氷結プラスティネーション!

凛凛凛凛冽冽冽冽
凛凛凛凛冽冽冽冽

斯(か)くして、私の血管は紅珊瑚のやうに凝結し、私の眼球はドライアイスになってしまひました
もう、涙を流すこともできません

   §

「これで良かったのですか?」
「はい、これで良かったのです。かうなることは、初めから分ってゐました」



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