星にならなかった河童 第五章 川へ行った者/板谷みきょう
 
荒れる水の中に、“影”が見えた。

「あれは河童だ」と
誰かが言った瞬間、
助ける理由は消えた。

“影”は、
重いものを背負っていた。

甲羅のようにも、
石のようにも見えたそれは、
枷と、
それを杭につなぐ太い鎖だった。

鉄は、
濁流の中で杭と男を一つに縫い止めた。

水音がすべてを呑み込み、“影”は沈んだ。

その夜、
誰も「助けて」という声を
聞かなかった。

聞かなかったことが、
この夜を越える条件だった。

条件は守られ、
村は静かに息をつないだ。
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