県立ロダン美術館/右肩良久
 
春光や「カレーの市民」の尻の張り

春光や決死の像に漲りぬ

彫像の裳裾の奥へ春光る

春光の中や塑像の蹲る

緩みなく「考へる人」春早し

春立ちぬ考へること生きること

地獄門この世の春に照り映ゆる

 あなたは時々手がつけられない人になる。温厚で常識的なあなたの殻に亀裂が入って、暖かい血が噴き出し、裂け目から赤い肉が覗く。僕にはとうてい理解できない苦しみにのたうち回るのだ。「私が考えるべきことを先に誰かが考えてしまっている。だから私には考えることが何もなくなってしまった。」どうしようどうしようとうろたえて、ふいに泣く。上目遣いで僕にすがりつく。もちろん、僕にどうし
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