百鬼句集・青色版/佐々宝砂
 
雨音す記憶の裏の廃墟より

うすぐもにあなたをのせて追放す

がじゅまるの森よわれらを放逐せよ

がむらんや人なく冷たくゆーとぴあ

霧襖抜けて来しひと霧に消ゆ

くすみたる欄間の天女ふと笑ふ

桜ばなから閃きながら昇るもの

白き翼黒き翼と堕ちにけり

涼しさや我を離るる我の魂(たま)

空の隅っこに読めない文字の群

つくられてつくりし人に恋へば寒

鉄橋を飛べば重たき来世の髪

曇天の青き硝子は割りたまえ

懐かしき破滅のほむら草いきれ

生首を飼ふと云ふひと秋暑し

白昼 抽出の闇に極彩色の国

波浪警報 歓喜の内に一人死す

人の子を抱けば重たし雪女郎

ひろびろと高き空には虫住めず

夕焼くる遊園地にはざしきぼこ

聾者なり光の蝶を聴きしより

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