秋刀魚うまし(自由律無季)/道草次郎
 
さしまねく何かにしたがいながらも風車(かざぐるま)

炎天に自己愛もやしつくしきり雲の流れる

ロクデナシともなれず秋刀魚と菜箸

秒針ばかりが動き昼の爆撃

白雲が折り目無く竦(すく)んでいる

晩夏の山涙ぐみつつ暮らす犬

透明な晩夏の期待風の下(しも)

このこころこころと名づくものほどの

会わす顔失くし街へまぎれつくしはて

まっすぐに引けぬ病状風も凪ぐ

うららかな陽射しのうたの釜地獄

とうめいとうめいとうめい君もぼくもとうめい

さりとて忍ばねばと海風

鴎なき子なきぼくもなきしらじら白波

少しはマシというマシにもピエロ死ぬ

言いきらぬ処に詩魂そのツラを撲(は)れ

なみなみとおもえば夏注がれずじまい

劣等感をはんぺんみたいなものに焼く

慰めたように自分を慰められずも先(ま)ず午後ティー

そんまんま裸んぼのまま秋風待つ

もどれずにどうにもならずに彷徨う猫化け

ぷらすちくといえばなんだかたのしく




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