晩夏(自由律俳句)/そらの珊瑚
 
目的地を知らされていない旅路の途中はみなトランジット

不安定のエネルギー浮上して高気圧

空に立ち上る灰色の龍、雷

絵葉書に古い遺跡の写真ありどこか懐かしい気がする夏

蝉蝉蝉、はべらせて大樹

蝉の声 命の速度と比例する

一匹のトンボに群がる蟻たち。バーゲンセールでもないだろうに

自らの重みをささえきれなくて、うつむく向日葵、ほどほどにしなければ辛いよ

疲弊した鉢植えの花はただ夕立ちだけを待っている【最後の望み】

正午にはわたくしの影も縮小されて小さな子供に還る夏休み

かなしい結末を知っている映画なのにまた見てしまう【何故】

やり残した宿題は永遠に終わらない

片羽の蝶ゆらゆらと舞い戻る

もう既に失われたというのに、痛みだけが甦る

誰も参る人もないセイタカアワダチソウの墓標、未来の私、晩夏

りーりる りーりる オルゴールの蓋開いて一番乗りの秋の虫






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