魔と刃物/木立 悟
幽霊は短い昼の闇に立つ
光にも灯にも痛みの降りそそぐ
紙ひとつ千切る間にもう字を忘れ
とどろきが光を越えて芽を撫でる
破壊しにでも破壊とは何と彼女言い
北の地の花に焼かれた耳ひとつ
臓物を石に並べて裏彼岸
刃物から射られし蒼さ目を捨てる
雨の日の合わせ鏡を削る息
こがねからこがねしたたり日は終わる
笑みが降り鉛のなかの笑みを焼く
けだものよ祝祭という怪物よ
指いつつ目もいつつにて海かわく
帰れない帰れないまま星を喰う
毒の座に毒を注いで人と成す
硝子咬み吐息みずから魔に入る
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