みずたまり/木立 悟
空わたり沈むまなざしみずたまり
二季またぎそよぐ野の墓みずたまり
何も得ず何も見ず居るみずたまり
輪を描(か)かずめぐる生の輪みずたまり
鱗(うろこ)着て鱗脱ぐ夢みずたまり
星ひとつ星雲となるみずたまり
夜うがつ涙のかたちみずたまり
気に入らぬ鏡捨つるやみずたまり
どこまでも捨て主映すみずたまり
ただひとり哭く声を聴くみずたまり
己れ刺す刃のごときみずたまり
爪をたて朝のぼりゆくみずたまり
悦びに背(せな)を割る羽みずたまり
空を喰み空の色になるみずたまり
知りながら応え返さぬみずたまり
あなたまで遠すぎる道みずたまり
まぼろしとたましいの姫みずたまり
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