或る夏の日 三篇のオムニバス/るるりら
 

【わすれがたみ】
ある夏の日
百合の花柱を
みつけました
薄紅に透ける花弁には
まっすぐな いのちの
いとなみが ありました
それは
ふと おもいだしたくなる
この夏の わすれがたみ
  

【梅林駅】
瓦礫の中を歩いた泥だらけの 体で
電車を待つ 
まだ夕暮れてはいない
線路のそばの蓬も 倒れていて
この場所にも 水が来たことを示している

線路の向こうで
もくもくとなにかの作業をしている人が見えた
車から なにかをとりだし 大事そうな 床に それを並べ
扇風機をあてている
どうやら本のような物のようだ

夕日が その男性の
[次のページ]
戻る   Point(16)