幸福/吉岡ペペロ
 

遠くで雷がしている

光は見えない

雨も降らない

ただ暑いだけだ

おっさんの端くれとして

バスに乗っては降ろされ

名所を歩いてはまたバスを待つ


バスの車窓から街を見つめる

このひとたちの幸福とはなんなのだろう

それはそのまま

自身にとっての幸福とはなにかという問いになる

ひとびとは暇つぶしをしているようにも

切実を抱えているようにも見える

自身もまた暇つぶしをし切実を抱えている

やりたくもないことを言い訳にして

やるべきことを遠ざけている

時間を思う

人生の時を思う

価値観なんてどうでもいい

それを支配している暇などない

好き勝手やってくれ

このままで終わりたくない

ごめんよ、みんな

ありがとよ、みんな


遠くで雷がしている

光は見えない

雨も降らない

ただ暑いだけだ

おっさんの端くれとして

バスに乗っては降ろされ

名所を歩いてはまたバスを待つ
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